今週からは再度不動産投資に焦点をシフトして、お話ししていきたいと思います。100話目を間近に控え、この数週間は今後の投資戦略やプランなどについてお話ししていきたいと思っています。その上で、まず今週は弊社の再開発プロジェクトである1270 Frances Streetの現状についてお話ししたいと思います。

1)1270 Francesプロジェクトの状況

結論から申し上げると、1270 Frances Streetプロジェクトは打ち切りました。主な理由としては、今回のCOVID-19(コロナ)による市場の行方が不透明になった事です。その様な中での中長期開発プロジェクトは建築期間の延長が濃厚で、投資家への配当予定や掲げた投資率の還元も定かでなくなり、プロジェクトの継続は投資家に対してファンド運営社の責任放棄に繋がると考えました。もちろん弊社は不動産開発業社ですので、プロジェクトを中断するのは開発業社の恥だとお叱りを受けるかもしれません。しかし、弊社としては関係者全員が全うなWin-Winを得られなければ、プロジェクトは行われるべきではないと考えています。よって、今回の様に投資期間が当初の予定より延び、確実な竣工時期や投資家への配当プランが計画に大凡沿った形で提出することが出来なければ、そのプロジェクトは継続しない方が良いと私は考えています。しかし、個人的にも、またバンクーバーで邦人不動産投資会社を名乗る企業のトップとしても、この決断は非常に苦しく、苦い経験の一つになりました。しかし、まだ既存物件解体や掘削作業前の段階ですので、取り返しは付くと考え、現在投資クライテリアの見直しを行い、勧め出したところです。

今回のプロジェクトは二筆3物件の物件(1270, 1258, 1254 Frances Street)から成り立っています。1270 Frances Streetにつきましては、売却することを決め市場に出しました。運良い事にコロナ発生後でも買主が直ぐつき、現在デューデリ中です。予定通りに行けば8月中旬から9月の中旬には、クロージングを迎える予定です。1258と1254 Frances Streetについては、現在改築プロジェクトとして内容を変更し準備を進めています。1258については基礎が良い為、化粧直しのみで資産向上につながると思われ、年内にも竣工する予定です。1254は老朽化や躯体の補強が必要になる為、2021年夏を目処に動き出しました。これら物件における改築内容などについては、この先各プロジェクトとして取り上げ、詳細をお話しして行く予定です。

2)学んだ事

今回のプロジェクト及びこの決断から学んだことは多々ありました。例えば、1)バンクーバーの様な建築申請が長期化する市場には開発プロジェクトは不向きである、2)開発プロジェクトに於ける予約販売率のハードルはとてつもなく高い、3)区分所有は住宅事情に左右される事です。

最初の「1)バンクーバーの様な建築申請が長期化する市場では開発プロジェクトは不向きである」という事についてですが、今回のプロジェクトでもデザインや行政との話し合いに弊社は既に約2年の年月を費やしています。いろいろな準備を行う事で費用が嵩むのは当たり前ですが、それ以上に時間がかかる事で、今回の様な経済事情の変動に対応出来ないのが1番のネックになりました。2年間という年月では経済への変化も色々起きますし、好調な経済も一転して下向きになる可能性もあります。この様に一回ロックインしてしまうと、全く身動き出来ないのが一番苦しい現状です。

「2)開発プロジェクトに於ける予約販売率のハードルはとてつもなく高い」という面では、現バンクーバー市場において、建築融資引き当てを開始するには約60%の予約販売が必要になります。しかし、購入者にとっては、現物がない状況ではビジュアル化するのも難しく、買い手が付き難いのが現実です。高層マンションの場合には、展示ルームを準備してもペイするのですが、インダストリアル物件の場合には、これらモデルルームを作る予算が取れないのが現状です。また、特にバンクーバーは現物を見てから購入判断する人が多く、「鶏が先か?卵が先か?」の議論になってしまいます。よって、弊社の場合には予約購入者を連れて来た仲介にはコミッション以外のボーナスを支払うプロモーション戦略を繰り広げる準備をしていました。

「3)区分所有は住宅事情に左右される」点については、正直今回初めての経験でした。今までの経験では区分所有物件というものを取り扱った事が無かったことが原因でしたが、これほど住宅と連動するセグメントだとは知りませんでした。具体的に説明すると、区分所有を購入するバイヤーは個人投資家やオーナーユーザーが殆どで、企業規模としても小企業が殆どです。この場合、購入者が企業オーナーであっても、事業用不動産を購入する事で、家賃からの影響を防ぎ、将来的なキャピタルゲインを得る主旨が存在します。しかし、殆どの場合においては、区分所有は住宅購入と比較され、購入価格や将来的成長率の糊代が比較されます。これはアメリカンドリームの様に高額な状況の中でもマイホームを購入するのか、事業用の物件を購入して事業拡張を狙うのかの選択肢を迫られているからです。例えば、バンクーバー市内の一軒家は、今でこそ2億円弱で購入出来る様になりましたが、数年前までは約3.5億円していました。購入に対する個人融資では80%程のファイナンシングが可能です。またその上、ここ数年間歴史的な低金利状況が継続した為、住宅購入への意欲は全価格ポイントにおいて壮絶でした。

その反面、企業による自社用の商業物件購入には、90~100%の購入融資がカナダ開発銀行から可能になります。その上、企業融資に於ける金利は収入と年末調整で相殺出来るので、税金対策にもなります。(住宅の相殺は不可) また、住宅同様の低金利状態が不動産所有を促し、査定価格成長が年率二桁になるインダストリアル物件では、特に購入意欲をそそる状況でした。

しかし、近年、外国人投資家が多くの高級住宅物件を購入してきた事で、価格上昇率を高く映し出して来た矢先、外国人購入制限の一環として多種の税金が導入され高額住宅セグメントの需要が急落しました。これにより、住宅セグメント全体が急降下したと勘違いされ、区分所有商業物件への精神的安定と信頼も同時に疑われる様になり、ここ一年で需要が急降下しました。しかし、現在でもインダストリアル物件への需要は供給を大幅に上回っており、特にラストマイルデリバリー(届け先への最終配達)拠点の確保はプレミアムが付く程です。

よって、今後のプロジェクトではこの様な急な変化にも対応できるプロジェクトである事が必須と学びました。これからお話ししていくプロジェクトをご理解いただく事で弊社の今後の対応策も同時にご理解頂けると思っています 。

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