先週はFrances Streetプロジェクトの打ち切りについてお話ししましたが、今週は今後手掛けるプロジェクトの概要、および弊社の考えについてお話ししたいと思います。まず最初に申し上げる事は、我々は今後も最小限の社員数でアイディア屋として活動していこうと考えている事です。その上で、今後の事業成長と事業エリアの拡張の為には、1)複数の小物件プロジェクトを同時並行に行っていく、2)短期間プロジェクトに集中する、3)改築に特化する事だと思っています。
1)複数の小物件プロジェクトを同時に行っていく
小プロジェクトに関わる事で、資金的圧迫を最低限に抑える事が出来、複数の物件を同時に取り扱うことが可能になります。例えば、物件購入には60%のLTV(融資資産比率)が適用されるので、弊社の資本注入は40%で済みます。また、改築を行う上での建築融資も60~70%が確保可能になります。銀行との折衝によっては、当初からの購入目的が改築や再開発で、購入後一年以内に工事開始が可能な場合には、購入と改築を一つのプロジェクトとみなし、購入と改築必要金額を合わせた融資を取り付ける事も可能になります。これにより、申請費用の節約や手間が省ける事になります。同時にこちらの銀行では、竣工時の予測資産をベースに60%まで融資してくれる方法もあります。融資返済額は大幅に増えますが、資金が足りない場合には、この様な方法で借りる事も可能です。そして、プロジェクト数が増える事により、銀行との関係も密になり、信頼が上がる上に手順やリスク調査もスピーディーに行ってもらえる様になると考えています。
これら実績は投資家募集活動時にも役に立ちます。オリジネーター企業(弊社)の実績は現地の投資家でも将来的に考えている日本からの投資家募集の際においても、投資家審査項目の一つになりますので、多数の実績を持つ事は募集期間の短縮とプロジェクト着工時期の前倒しに繋がります。
勿論物件数が増えれば、各プロジェクトを管理する人材も必要になってきます。しかし、個人的経験上、当分は最小限の人数で管理・遂行が可能だと見ています。よって、各四半期に二物件以上着工したり、アメリカなど地理的な難しさが出てきた際には、弊社としても人材を増やして対応していこうと考えています。
2)短期間プロジェクトに集中する
各プロジェクト期間を最短期間に抑えるのは、投資リターン率を上げる面でもとても大切な事です。例えば、プロジェクトとして40%の最終配当投資率を生み出せるものでも、投資期間が一年であれば還元率40%になりますが、一年半かかると年率投資還元率は約27%まで落ち込んでしまいます。これは10,000円の投資に対して、一年で4,000円戻ってくるか、2,700円戻ってくるかの差になります。不動産投資は小口化された場合でも数万単位になりますので、この影響はさらに大きくなります。
期間を最短にする理由には、経済の影響を最小限に抑える意味も持っています。経済の変化は利益への圧迫だけでなく、需要や物件デザインや構造までにも影響が出てくる可能性があります。例えば、バンクーバーでは2019年夏まではデベロッパー市場で、どの様なデザインの物件でも選択肢や供給が限定されていた為に勢いよく売れていました。しかし、COVID-19(コロナ)後は、市場の変化と同時に購入者からのデザインや使い勝手上の要望を含める必要が出てくると思います。この様な要望や市場の変化には、着工後は大きなコストなしでは対応出来ません。この様な状況に対してリスクヘッジする上でも、短期間プロジェクトは大事な要素です。
3)改築に特化する
一般的な話としては、改築の方が難易度は再開発より上がると言われています。技術的な面は歴史的建造物の保持など特別な状況を除けば変わりませんが、改築では工事を始めないと最終的な予算や改築範囲が定められません。物件の築年数が長くなればなる程、アスベストなどの環境問題物質や建築基準法の変化などからの影響も大きくなります。よって、改築工事の場合にはContingency(リザーブ予算)を多めに取っておく必要があります。このリザーブで想定外の出費に対応します。
では、何故具体的な予算も立てられない改築を選ぶのか?という事ですが。。。単純に言えば、改築と再開発の二つでは、改築の方がLesser Evil(予測不可能範囲が少ない)だからです。再開発では利益幅は改築より一般的に大きく、プロジェクトが大きければ大きいほど利益幅は上昇します。改築では、既存の物件の骨組み内で行う場合には利益幅が限られてしまいます。
再開発では、予想利益は大きくも、同時に見えていないコストも多く存在します。例えば、建築申請上設計の変更などで時間を要したり、掘削開始後に地層問題や天候上の問題にぶつかったりします。建設上でも資材の高騰、工程の遅れ、図面変更なども可能範囲内です。また、物件規模が大きくなればなるほど、着工前の必要予約販売件数は上昇し、販売期間が延長する可能性も十分にあり得る事です。また、投資家との共同投資の場合ですと、カナダでは年率20%ほどが投資家配当として求められますので、そのレベルを加味した竣工計画が必須になります。
改築の場合には、見えない部分はあるものの、面積が限定されており、コスト的にも大凡の予想が可能になります。例えば、アスベストは内装壁内や屋根裏に入っている事が多いですが、一箇所開けるだけでどの様になっているか大凡がつき、密閉されている場合には、問題がないのが実態です。改築の場合には、室内作業がメインになりますので、クレーンを用いたり、近隣の空中使用承諾書の交渉や道路閉鎖のコストなどが不必要になります。更に老朽化の進んだ物件は価格的にも安く購入が可能な上に、アイディアを投入する事で、新古ビル価格で販売が可能になります。余談になりますが、中二階の増床、二階部分の増築や骨組みまで落とす改築など、改築の中にも他種の選択肢が存在すると考えています。
ただ、最後になりますが、物件サイズによっては冒頭でお話ししたリスクレベルが変動することもあり随時選択肢を検討する必要があります。また、我々は自らと社会の発展に対して貢献する事が使命と感じている為、戦略・利益面においても不動産投資家らしい資産クリエーターとして今後も活動していきます。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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