今週も引き続き弊社の今後の活動についてお話しして行きたいと思っていますが、先週の話は概要で終わってしまい、色々な質問を残した感じで終わってしまったと思っています。ですので、今週は不動産投資をさらに掘り下げ(専門的な話になってしまいますが)、弊社がどの様な手法と考えを用いて現状の中で(金融機関からの条件なども含め)、ハイリターン成長戦略を遂行しているのかをお話ししたいと思います。
弊社の最終的目標は物件の所有と運営ですが、現在のリターン率が3%前後と長期キャピタルゲインを狙わない限り、所有は無意味だと思っています。また、弊社ではこの様な利率では複数の物件を所有する財力がないのも実情です。よって、投資資金の最有効化を考えた上でも、改築(増築)に集中し売却を出口戦略としています。
バンクーバーのインダストリアルテナントの規模は全体的に小規模です。200平米以下、500平米+-、1,000平米以上の三つの枠に分けられ、1,000平米以上は主に物流倉庫になります。他の二種類では製造、物流、ITやデザインなど幅広い業種で使われています。弊社としては、コスパ、買主層、利益面からも500平米前後の物件が一番柔軟性も高く魅力的と思っています。購入価格としては$560/平方フィート(約476,000円/平米)になるので、$2.8MM(2.38億円)が購入価格になります。その60~70%が購入融資で賄われ、出費は$1.6MMになります。その上、デューデリやクロージングで約$20,000程かかり、合計で約1.5億円相当の投資になります。(注:購入時の環境調査をフルにすると$35,000もしくは再開発(増築)だと$50,000程更にかかります) その上で、弊社の今後の戦略は1)既存枠組み内の改築、2)増床、3)増築をメインに考えています。ただ、分析用の価格は現在の市場価格を反映していますが、近年インダストリアル物件への需要がとても高い為、購入可能物件の発掘がいちばんのネックになると思われます。(需要と供給で、価格の上昇が起こると思われがちですが、やはり市場考慮価格を超えた物件には動きがないのが現状です。)
1)改築
バンクーバーでは駆体、外観、洗面所のリニューアルを含む配管や電力などに変更がない場合には、概ね建築申請なしで工事が可能になります。また、洗面所、外装パネルやサンルーフなどの設置はMinor Developmentとして通常のDevelopment Permit(外観建築申請:5ヶ月間)とBuilding Permit(内装建築申請:約6ヶ月間)が要する所を2ヶ月間ほどで申請が可能になります。こちらの場合には、工事額と改築項目によって建築基準順応必要レベルが変わってきます。よって、塗装や床タイルの貼り直しなどの化粧直しにおさめておく事で改築期間も半年ほどに保つ事ができます。また、照明器具やトイレの取替えや外装パネルの取り付けなども申請マターですが、並行して申請する事で、工事期間を短期に抑える事が可能です。内装的にも細かい内壁を撤去しオープンスペースを提供する事で、光の浸透やビジュアル的なオープンスペースも確保できます。
ただ、改築を行う場合で大切なポイントは床の高さです。例えば、地面と同レベルの低床倉庫の場合はフォークリフトなどの作業車の乗り入れが考えられ、上記の様な改築を施しても販売価格に反映されない場合が殆どです。この様な製造・作業倉庫を求める購入者はオフィスの見栄えなどよりも、作業場の天井の高さや、電力供給量が購入検討ポイントになります。よって、購入時にどの様な倉庫であるかが、改築プロジェクトの将来性を左右してしまいます。
2)増床
増床も工事的には簡易ですが、建築申請が必要になります。増床範囲によってもこの申請の難度が変わってくる上に、増床面積で駐車場の増数や工事予算によって省エネ対応や耐震補給が求められます。基礎は既存を使う為、増床エリアにも限度がある上に、中二階を付け足すにはタパの高い箱型物件を選ぶ事が必須になります。そして、増床になると融資元も前売り条項(建築融資支払前に購入予約契約を締結する義務)を貸し付け条件に付け足してきます。ただ、バンクーバーの場合は竣工物件を見てから購入判断をする購入者も多い為、この前売り条項はネックになりがちです。よって、銀行融資を取り付けると並行して、自己資産を用いて増床工事を始め、購入者がついた時点で銀行から払い戻しをしてもらうスキームを取り入れるのが一つの打開策です。
増床は販売可能スペースの増加になる為、上で申し上げた作業用倉庫(低床倉庫)でなければ、フレックスオフィスとしてインダストリアル物件を変化される事が可能になり、最終的投資利益幅も一番大きく確保出来る様になります。ただ、増床する事で建築予算も上がる為、建物全体の耐震性の補強や省エネ対策への取り組みが義務付けられます。そして老朽化が激しい物件であればあるほど、この様な現代化へのコストは膨らむと同時に、建築申請期間の延長も予測されます。よって、この様な予算も含めたアンダーライティング(利益分析)を行う事が必要になり、この様な見えないところの補強を利益に繋げる為には、仲介業者の理解と知識を用いた購入者への説明力が必須になります。
3)増築
そして、増築においては既存物件の老朽化状況(違法建造物を含めた)を確認しながら、購入物件を見定める必要があります。バンクーバーの場合には1960~70年代に建築された小規模インダストリアルが多い上に、近年までは行政の監督も緩いものでした。よって、部分的な違法建造物も多く存在します。丁寧なデューデリでは行政に出向いて、竣工検査図面を確認することから始まります。弊社の場合でも、再開発を目的にしていた事で、竣工検査図面を確認していなかった為、3物件中1物件(1254 Frances Street)には違法建造物が含まれていると思っています。この物件の具体的なプロジェクトについては、今後のブログでご説明したいと思います。
物件サイズが小さ過ぎると増築固定費が大きく嵩み、プロジェクトが遂行出来なくなってしまいます。また、増築は各物件とその状況(基礎、躯体、現場状況)などにも大きく左右される為、各物件の内覧を行うまでは判断出来ない難しさがあります。例えば、既存の基礎をそのまま使用出来る状況であれば、5,000平方フィート(約460平米)ほどの既存物件から増築が可能になる計算です。また、すでに申し上げた通り、既存物件の全体的なデザインバランスや新古物件としての販売可能価格も考慮して、増築サイズを検討する必要も出てきます。増築部分を増やせば増やすほど利益は上がりますが、追加条件(耐震強化、駐車場、駐輪場や更衣室の設置義務)も増し、面積配分上も複雑な作業になり、増築予算に更なるコストが加わってしまいます。シングルテナントの場合には、全てを購入者のアメニティーとして販売価格に含める事が可能ですが、マルチテナントビルになると、これらアメニティーは共有施設になり、コストの回収は販売価格に上乗せする形になってしまいます。新古物件の場合には市場価格を上回ることは不可能ですし、通常は新規物件の市場価格を下回るのが現状です。よって、増築部分の割合を決めるのは、とても繊細な作業になります。
因みに、完全な再開発の場合には、駐車場の設置や行政のデザイン上の意向なども取り入れると、自己資金投資の場合における最低床面積は50,000平方フィート(約5,000平米)になります。よって、既存の基盤に建てる条件がどれだけ重要かお分かり頂けると思います。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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