今回は2021年9月に報告されたBC州の49代表的企業トップに対しての経済動向についての調査結果についてお話ししたいと思います。また、この調査は10月に行われたカナダ国内総選挙及び首相選挙の前に行われたものであります。ただ、以前のブログでもお伝えした様に、今回の総選挙の結果は選挙の前後では殆ど変化する事はありませんでした。しかし、2021年12月に入り、オミクロン派のコロナ禍が発見された事で、今後の経済回復に対しては更なる調査が必要になるかも知れません。

1)BC州の経済動向

では、9月時の調査結果ですが、結果は「今後の経済動向を懸念する」というものでした。それらの主な原因は
1)雇用の人材不足
2)高額な税金
3)地理的拡大の制限
が挙げられました。これらに共通する要因は一人当たりの経済成長(収入の向上)とBCビジネス協会(Business Council of BC)の副会長のDavid Williams氏は話しています。

更に深刻な要因は最近の国と州の経済政策には、
1)一人当たりの収入向上
2)生活レベルの向上
3)社会的安全網の維持(The ability to support our social safety net)
を作り上げる状況になっていない事だと話しています。

そして、カナダはコロナ禍の影響で経済のサイズベースでは世界で最高額の債務を発行しており、このジレンマからの脱出の出口は経済成長しか有り得ないとWilliams氏は警告を促しています。

その上で、ポスト・コロナ状況の経済については、75%の返答者が今後12ヶ月の期間で経済は多少ながらも上昇すると答えており、78%は経済投資が向上すると予測しています。そして同返答者の40%は消費(Sales Volume)増加を予測しており、41%がフルタイムの雇用増加を考えていると返答しています。のことです。しかし、Williams氏はこれら回復の原因は経済の自然な回復によるもので、政府政策の助長によるものではないとして、政治政策に対して警告しています。

2)BC州の課題

(社会は)いつかはコロナ禍状況から回復するとした上で、Williams氏は良質な生活環境と社会的安全網の継続を行う為には、個々の収入を上げることは必須と訴えています。その一つとして現状は高インフレ状態が継続する中で、個人の収入が未だ低い状況が継続していると話しています。

ただ、私的意見を申しますと、現在のインフレ率が3%を超えているのは、今までコロナや一時的「監禁」状態にあった住民に消費先がなかった事による一時的なリバウンドだと私は見ています。よって、カナダ中央銀行の報告でもありました様に(弊社2021年第3四半期市場レポート参照)今年度以降のインフレ率は降下する見込みです。

今回のブログでこの調査結果を取り上げた理由は、BC州の状況について表面に見えてこない状況をお伝えする事にありました。個人的には常に申し上げている様に、BC州およびバンクーバーの経済には依然として活力があり、現在の物理的インフラ整備やローカルレベルの行政システムの調整が終了した10年後には世界のリーディングシティーになると確信しています。よって、長期展望は明るいものの、今までのブログやレポートでもお伝えしてきたエビデンスに今回のデータは良い役割を果たしていると思っています。

上記Williams氏が話す様に、バンクーバーを含めたBC州の最大の問題は個人の収入の低さです。そして経済ベースの小ささが原因だと私は考えています。例えば人口が似ているバンクーバー圏とシアトルがあるキング群の平均収入を比べると、バンクーバーは810万円に対し、キング郡は1,130万円になります。もちろんキング郡はマイクロソフトやアマゾンをはじめとするハイテク企業発祥の地であり、その他にもボーイングやバイオやヘルスケア業界が存在しています。しかし、それ以上に平均住宅コストではバンクーバーの方が約2,000万円高騰しており、ワシントン州(キング郡の州)の無州税状態は更に追い打ちをかける状態です。

3)まとめ

地理的サイズも今後のバンクーバー成長には欠かせない大きな問題です。キング群と比べても半分しか無い地域(バンクーバーが2,900km2に対してキング群が5,980km2)にほぼ同じ人口(250万人対230万人)が住んでいる訳です。バンクーバー市は世界でも人口密度が高い都市として有名です。今後は更に農作用地を経済用地に変更する必要があり、若しかしたら20年後のバンクーバー圏から農業は殆ど姿を消しているかも知れません。そうすると関係者の再教育などからも更なる経済成長が見込める様になるかも知れません。

バンクーバーは今後更にホワイトカラー都市化すると思われ、知的経済が基盤となる世界的な先端都市になっていくと思います。そういった面では、ワクワク感が一杯で目が離せない都市の一つだと思います。

もちろんその上でのハードルは今までのブログでも取り上げた様に多々存在します。一番大きい「問題」が平等を最優先する「隣人愛」と財力以上に生活と心の豊かさを重んじる羨ましい人間性です。しかし、それら全てがバンクーバーの魅力であり、将来を導いていくのだと思います。だから余計目が離せません!

※この記事は2022年12月末に執筆されたものです。

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