不動産投資、投資戦略ならKMPacific

KM Pacific Investments Inc.代表 枡田耕治の週刊ブログです。カナダ西海岸時間、毎週水曜日の朝に更新予定(日本時間の毎木曜日早朝)。


2018年4月18日

第13話「アメリカとカナダの賃貸契約の差」

 先週はアメリカとカナダの融資についての違いを掻い摘んでお話ししましたが、今週は賃貸契約書やその内容の違いについてお話ししたいと思います。また、今回の「カナダ」はBC州をメインとしてお話ししたいと思いますが、今回は次のポイントについてお話ししたいと思います:1)契約形態、2)ディユーデリジェンス期間、3)減価償却

1)契約形態
 アメリカや日本ではGross Leaseが主流ですが、BC州の契約は殆どがNet Leaseです。Gross Leaseの場合には、全ての費用が賃料に纏められていて、賃料として一括請求されますが、Net Leasenの場合には、賃料と共益費は別項目として請求されます。この場合の違いは、Gross Leaseの場合には、正確な共益費が未定の場合が多いですが、憶測の価格を込みした上で、賃料が契約時に提示されている事です。Net Leaseの共益費は実費(+管理費が入る場合にはそれも)で請求されるので、地主の設定する一年間が終わってみないと、最終的な費用は分かりません。また、Net Leaseの場合には、一年が終了した時点で、共益費の最終計算が行われ、多く徴収した場合には払い戻しがあり、少なく徴収していた場合には、追加徴収があります。

 Gross Leaseは最初からかかる費用が把握でき、請求額も決まっていますので、年末調整の様なことが起こりません。しかし、費用徴収が下回らない為に、余裕を持って賃料が設定されることが多く、テナントからしてみると、払い過ぎと感じる場合もあるかもしれません。同時に、光熱費使用に対しては制限を気にする必要がないのはメリットです。ただ、現在トレンドの省エネビルや二酸化炭素節減を考えた場合には、そのゴール達成にはハードルになる事が多いです。

 また、バンクーバーの様な不動産バブル市場では、不動産固定資産税の継続的な増額に伴い、共益費が毎年二桁で上昇しています。よって、この様な市場では、Net Leaseを使った方が、確実に全ての費用を回収できるスキームが大家として組めます。

2)ディユーデリジェンス期間
 アメリカ・カナダでも行うディユーデリジェンス(物件調査: DD)内容については同じですが、アメリカの一般的DD期間は大体45日から60日ほどで、その後に30日間のクロージング期間が設定されています。もちろんプロジェクトの規模や複雑さによっては、この調査期間が延長する場合もあります。カナダでも平常な市場状況の時には、45日から60日ぐらいが相場でしたが、近年の不動産バブル(もう9年間ほど継続していますが)により、機関投資家以外の契約期間は急激に短縮されてきました。複数の同時オファーが入っていた去年などのDDは短いもので14日間、通常で20日間ほどでした。2週間ほどでは、実質的には何も出来ないので、所有者事実の確認をするぐらいで条件を取外し、Firm Offer(確定申し込み)に入る状況でした。現在の流れは、30日から45日間のDDに30日後のクロージングというオファーが一般的になっています。クロージングでは両サイドの弁護士による契約書の作成になるので、2週間以下というのは実質的に無理とされています。

 30日間でも第2環境調査(Phase II Environment Assessment)は出来ない状況なので、近年取引が行われていない物件、もしくは売主が環境調査レポートを既に準備していない物件では、45日間のDDが一般的です。

3)減価償却
 この点は日本の投資家の皆さんも良くご存知だと思います。特に減価償却済みの木造アパートを購入され、日本の税金対策用に使われていたという話はよく聞きました。(しかし、日本でもこれは過去の話になりましたが) 結論から話しますと、アメリカの税法の方が早く償却出来ます。それにより物件の流動性を高める効果が生み出されます。カナダの場合には、アメリカの定額方に似ており、購入年と売却年以外は定率の4%で計算されます。購入年と売却年はさらにその半分の2%の減価償却が可能になります。これにより、税政策からくるスペキュレーティブな流動を防ぎ、不動産業界の健康状態をベースとした売買を促進させる目的があります。よって、減価償却のみで比較するとアメリカの方が優位に思えますが、下記の余談を考慮すると、一概にも言えず、全ては(特に企業の場合には)ケースバイケースになると思います。

 余談になりますが、カナダではアメリカと違い、Income GainとCapital Gainを混合して精査する事が出来、またCapital Gain税は純利益の50%にかかるようになっています。よって、実質的な率は13%になります。アメリカの不動産では1031 Exchangeなどの様なCapital Gain税支払いの延長方法もあり、一般的な税率の25%より異なると思います。

 次週からはまた新たなトピックについてお話ししたいと思います。今週も皆様にとって達成感の多い一週間になります様に。


KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治



海外不動産投資 投資戦略 クローズトエンド型投資