4月21日に行われたNAIOP(National Association of Industrial and Office Properties)は2年ぶりに通常の場所で開催され、200人程の不動産関係者が参加しました。今回のトピックは2022年の今後のバンクーバー市場に於ける現状と予測です。
結論を一言で言うと「賃貸の上昇」です。
1)バンクーバー不動産市場の現状について
バンクーバー不動産市場の現状はネガティブレバレッジ(投資からの利益率より金利の方が高い事。よって融資を得る事で利益がマイナスになる事)が起きており、投資戦略としてもオールキャッシュの長期保有しか可能な方法はありません。もしくはオールキャッシュで弊社の様な改築プロジェクトで高いキャピタルゲインを狙う事です。
しかし、この様な状況でも大量の資産は継続して流れ込んで来ており、投資物件への需要は記録的です。理由の一つにはバンクーバーの市場としての魅力及び将来的可能性です。今までにも何度もお話ししていますが、立地条件、限られた土地、豊富な資源、自然や生活環境的利点、高水準な教育レベルなど全てにおいても申し分ない条件が揃っている市場だからです。よって大幅な需要が存在するにも、供給が足りないために購入価格は大幅に上昇し、キャップレート(イールド)は押さえつけられてしまっています。
2)オフィス不動産市場について
オフィスにおいては、業界はBullish(成長を予測)で、キャップレートは3.88%まで低下しています。新築物件も現在400万平方フィート(約40万平米)着工中ですが、その75%は既に予約賃貸契約済みです。また、その80%に当たる契約が新規需要から来ているものとの事です。パネリストの話では、この状況は今後も継続するとの事です。なぜなら、上記で述べた優良市場条件で安定した物件を多くが求めている中、現在の所有者は売った後の新規購入物件候補が見つからないので、売る選択肢は持っていないとの事です。よって、継続する需要からくる価格の上昇は今後も継続すると見られています。
3)商業不動産市場について
インダストリアルではカナダの国内全域のAvailability(全賃貸可能スペース)は2%しかなく、バンクーバーの場合には0.9%しかありません。バンクーバーのインダストリアル用地が残り僅かになっているなか、今後もe-commerceや物流からの需要は増えるばかりです。よって、賃料も常に記録を更新しており、現在は$16.33psfまで上がっています。これはトリプルネット価格ですので、この上に$4~5psfの共益費が加算された価格になります。インダストリアルの需要が伸びるなか、オフィス同様土地がない為、既存の所有者は売却後の取り替え物件が買えない為に、売る事を頑なに拒否しています。よって、価格上昇は今後も継続して起こる為、さらに複階数物流センターの建築が進むと言われています。今後開発用地が出尽くしてしまった場合には(7年後ぐらいに予測されています)農地からの用途転換かカルガリー市へインダストリアル拠点が移動するしかありません。後者は政治的にも行政も必死に食い止める事でしょう。
4)バンクーバー市場における今後の見通し
最後に3人のパネリスト(機関投資家、プライベートエクイティー、ファミリーオフィス)が共通して出した予測は、2023年夏までの今後12ヶ月は状況が読めないとの事です。そして2023年の夏頃からは経済の安定と共に、建築コストも幾分低下し、家賃の上昇も起きるだろうとの事でした。また今後はライフサイエンス(医療施設)の開発が進むだろうと付け加えていました。
よって、バンクーバーは現在加熱しすぎている状況です。バブルを超えて現金投資以外では投資不可状況です。更にカナダ中央銀行の金利引き上げは、2022年の不動産市場の調整を強制的に執行させる状況になる事でしょう。あるモーゲージブローカーの話では、この夏頃から融資が止まり多くのプロジェクトが継続不可能になるだろうとの事です。これらは長期反映面からは必要悪なのかも知れません。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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