今回は2月9日(木)にNAIOPが主催したバンクーバーの投資市場アップデート朝食会の模様をお伝えしたいと思います。通常でもこの市場アップデートの朝食会は注目を浴び、多くの参加者がいますが、今回の朝食会は2023年の第一回目であり、2022年の間に金利が4.5%アップした後での投資市場アップデートとなった為、市場からの注目は熱く満席になっただけでなく、デベロッパーや仲介業者、モーゲージブローカー、ゼネコンやメディアなどの出席も目立つ程に注目を浴びる会となりました。

今回のパネリストはCBREのバンクーバー支社長を解説者として、カナダを代表するデベロッパー、資産運用会社、ノンバンク融資会社がパネリストとして参加しました。

1)朝食会の結論

朝食会の結論は「ファンダメンタル(基本的な考え方)に変化が起きている。投資意欲は旺盛で資金も余るほどにあるが、確実な案件を追う傾向にある」でした。そして「昨年までの歴史的ディール数の塗り直しは、考え直す必要がある」というのが率直なコメントでした。今まで、ゼロ金利(低金利)環境が大きなドライバーとなって不動産を含めた金融や投資市場を牽引してきましたが、それが一気に4.5%上昇した訳ですからこの様な変化があっても当たり前だと思います。

2)バンクーバー不動産投資市場の各セグメント詳細

これから各セグメントの詳細を説明していきます。バンクーバーの場合にはコロナ禍による生活圧縮の影響もありましたが、コロナ以前にも富の構築が企業及び個人レベルで進んでおり、企業の基本的成長姿勢は今も継続しています。ただ、社会的に覆っている「精神的不安(コロナ禍や今回の金利高騰による強制経済減速)」の解消がまだ不確実な為、大手企業も邁進する姿勢を見せられていません。また、他のカナダ地域においても状況が疎らな為、微妙な状況が継続しているというのが現状です。

ただ、CBREがデータを持って説明しましたが、オフィスやインダストリアルのファンダメンタルは未だ健全という事でした。

オフィス:

継続した新規物件の竣工がバンクーバー市場全体の空室率を9%から12%まで若干上昇させましたが、プレリースは新規供給の20%を占め、新規供給量は全体供給面積の5%と例年通りの数字を保っています。CBREとしては「さほどの問題もない」と説明していました。アメリカ市場と比べれば、10%+-の空室率は通常の数字ですので、今までのバンクーバー市場がいかに加熱状態にあったかが分かります。(コロナ前の2019年Q1の空室率は3.8%; コロナ開始後の2022年Q1は6.9%) また、パネリストは在宅による仕事の質の低下を指摘。特にコンサルティング会社から上がってくる調査の質が著しく低下している事を指摘し、各企業の存続という面からもRTO(Recovery Time Objective=目標復旧時間)が今後上昇して行くだろうと話していました。

インダストリアル:

インダストリアルはコロナ禍や今回の金利高騰にもマイナス的影響を受けず、需要は継続して存在しています。バンクーバーの継続的人口の増加(年約2%+)による消費の増加と土地不足からくる新規物件の建築不足のミスマッチが依然として大きな問題になっている事をあげ、今後も低空室率と賃料の上昇を予測しています。特に、開発用地の不足においては、複数階物流施設の建設が進む要因として挙げられています。しかし、この再開発を行う為には、相当郊外の場所を選択するか既存物件の解体が必須になる為、タイミング的な難しさは今後も存在して行くと思われます。また、小規模ユーザーにおいての区分所有であるStrata(米:Industrial Condo)は、自らの作業場の確保と同時に自らの資産構築を狙う思いがあるので、今後も人気物件として存在するとの話でした。

物流業界の進化と運営上の効率化は物流倉庫のスペックにも求められており、新規物件ではグローバルスタンダードが定着化してきています。例えば、タパ20ftの物件では$15psfが定番賃貸価格ですが、タパが40ftあるとラックも4段組め、現代的物流施設配置が可能になることで、$25ftが市場価格になっています。

ただ今後のバンクーバーの発展のためには土地不足を早急に解消する必要があるとしています。

リテール:

リテールは今後も存在を維持するだろうと話しています。国内REITに於いても平均空室率は3%に留まっており、明らかな需要が存在します。今後はオンラインショッピングとの連携サービスプロバイダーとして、進化したリテールが生まれてくるだろうと話していました。

複合住宅(マンション、アパート):

カナダの場合、法的な年間家賃上昇可能率は2%と定められている為、インカム利益率は低いのが現状です。ただ、人口の増加と今までの物件不足が今後も著しい需要を見せて行くと説明し、新規物件における賃貸が2020年より20%上昇している背景として説明しました。しかし、問題は家賃だけではありません。建築申請に要する時間が長すぎて、今すぐにでも必要な住宅開発を妨げているとCBREは説明しました。例えば、バンクーバーでは建築申請を行い、工事着工まで7年間を要してしまいます。これは市行政の方向性が毎回の選挙で大きく変動する事で、明確な方向性がない事にあります。また、担当職員によっても解釈が異なる事で多大な時間を要しています。

バンクーバーは世界で香港とオーストラリアのシドニーに次いで高価格住宅市場で知られています。いくら住宅購入の80%まで融資取り付けが可能とされていても、平均価格のマンション購入には$170,000(約1,800万円)の収入が必要になり、一軒家購入には$396,000(約4,000万円)が無いと融資条件に満たさないのが現状です。また、バンクーバーの年間収入中央値は$82,000(約840万円)です。この差で如何に現場に見合っていない住宅市場かがわかると思います。

今回のパネリストはCBREの解説員を除いて、一年後の金利は殆ど変化しないと予測していました。CBREは下降すると予測して朝食会を締めています。

3)まとめ

弊社としてはバンクーバーに将来的希望を抱いています。弊社がバンクーバーに所在する会社だからというだけではなく、変えられないバンクーバーの立地条件や環境は今後も世界から注目を浴び続け、需要は減ることはないと思っています。今後の発展には、給料の上昇と住宅の供給量の大幅な増加から来る住宅価格の変動が鍵を握ると思います。そのような事態になれば、インフレ率も2%ではなく、5〜6%でも耐え凌げる様になるのではないかと考えています。

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