不動産は特に人間関係のマッチングが大きく影響される仕事なので、如何に管理会社の担当者とうまく付き合うかでプロジェクトの利益が変わってきます。その上でも特に重要なのが、大家と管理会社の担当者をチームとして考え、立場に上下関係を作らない事です。
私は大家という立場で管理会社を雇ってきましたし、また管理会社として物件運営にも携わってきましたが、どの場合においてもチームとして関わり合えない人間関係のプロジェクトでは、運営が上手くいかず、大家観点では問題も多く発生します。最悪の場合には、管理会社を訴える直前まで行き解雇した事もありました。
このブログでは、管理会社の担当者には満足いく物件管理能力があるという仮定のもと、大家と担当者の人間関係がうまく行けば、物件の運営は上手くという仮説で説明していきたいと思います。
1)物件運営でよくある問題ー管理会社に依存
物件運営で一番の問題は物件所有者が管理会社に全てを一任して、管理会社は大家のために尽くすのが当たり前であるという考え方です。もちろん管理会社は金銭を受け取り物件運営を行なっていますが、物件運営の成功は自動的に発生する物でもなく、物件所有では第三者の管理会社がマジックを可能にする事は不可能であるという事です。
例えば、毎年翌年度や長期資産工事についての予算を管理会社は提出するのが当たり前ですが、その内容を確認しない、または理解出来ない(質問しない)所有者物件は必ずと言って良いほど、コストオーバーランや満足度が低く終わります。また、不動産は時間がかかる事業ですので、長期的資産計算がされない事で、10年後の不動産の資産としての位置付けや建物の魅力低下という事でテナント誘致に時間がかかり、余計な出費がある事も少なくありません、
これは、所有者の投資戦略が明確に示されない事で、管理手段が所有者の意向に合わないのが大きな原因です。よって、管理会社が無能なのではなく、逆に所有者の不動産知識や投資についての意識が低すぎるために起こる問題です。またこの様に一任する場合、管理会社は契約の継続を望む為に利益を優先し経費削減に走ります。しかし、これはテナントの満足度を下げる場合が多く、住宅ではテナントの頻繁な入替、商業では物件の故障や破損件数が多くなる傾向にあります。これらの原因はテナントが大事にされていないと感じ、物件に対しての「愛着」がなくなるからです。よって、使い方が雑になり、故障や誤操作などが発生し、騒音問題が発生したりします。
よって、毎年予算が上がってきた時には、管理会社とミーティングを持ち、各予算項目及び長期的運営計画について細かく話す事は不動産事業を成功させる為に最低限必要な事です。もし、所有者の不動産知識が浅い場合には、管理担当者に細かく質問して知識や理解を仰ぐべきです。何を聞いて良いか分からないレベルの認識であれば、正直その所有者の不動産知識が少なすぎ、所有者として適さないと思います。
2)物件運営でよくある問題ーチームワーク
また、管理担当者との性格不マッチも大きな問題です。冒頭の様に、「金銭のビジネス関係なのだから」という次元で片付けようとする事は、所有者の意向や投資優先箇所が汲み取られない(理解されない)事にも発展します。
これが大きく出てくるのが、資産投資(Capital Improvement)をする時期と内容です。所有者の投資目的が短期のキャピタル目的であれば、所有期間の資産投資は物件の価値維持と売却時のデューデリで明確になるので、大切な事です。しかし、2年で売る投資計画であれば、10年後の資産投資計画の為の資金をYr0(初年度)から貯蓄する必要はありません。逆にその余剰金を利益として所有者に配当した方が投資利益も向上し、PMとしてのパフォーマンスも向上します。この配当で所有者もPMもWin-Winな関係を保てる訳です。
チームワークが確立されていない不動産運営は効率良い運営が不可能になり、不動産投資で一番大事な出口戦略を無事遂行する上でも大きな障害になります。チームワークの向上という面では、管理担当者とオフィスでミーティングするばかりでなく、実際に物件に出向き、時間をかけて内覧を行うのは必須です。管理担当者が同席している事で、テナントからも管理側から上がってこない案件や問題が出てくる事もあります。テナントにしてみれば、この時ばかりと思い、彼らの意向や不満を訴えてくる事もあります。これはPM業者を予習者の視線で判断する良い機会です。時間をかけて物件の確認を行う事で、管理の真剣さもよく分かります。
3)経験とまとめ
個人的経験を話すと、PM(プロパティーマネージャー;物件管理担当者)との内覧で、ドアの蝶番のネジが緩んでドアがちゃんと閉まらなかったり、エレベーターのドア閉鎖のリズムが悪かったりなどあります。または床の端に埃が溜まっていたりする事で、清掃会社の管理能力を指摘する事もあります。もちろん、エレベーターの調節などは業者を呼ぶ必要があり、多大なコストがかかる場合も多く、PMも既に把握して予算に合わせた修繕計画を遂行している途中かもしれません。これらはPMと一緒に歩かなければ管理側の考えも理解出来ません。
物件管理は奥が非常に深いと私は思っています。PMが親身になってくれて、所有者とのチームワークで運営して行かなければ、プロジェクトの成功と利益の向上は不可能です。
KM Pacificグループ代表取締役社長
枡田 耕治
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