今回のブログではちょっと基本に戻り、我々の戦略である「リポジショニング」についてさらに掘り下げてお話ししたいと思います。リポジショニングという言葉自体日本語にはない為、一部の読者にはピンとこないかもしれません。しかし、これは弊社の基本的考えなので、重要なポイントになっています。

「リポジショニング」とは簡単にいうと改築を通して新しい価値を既存物件に施す事です。

新たな生命

よって、弊社では改築を行う時には、現行の使い方をアップデートするだけでなく、物件に新たな命を注ぎ、この物件が選択肢に入っていなかったテナント企業に新たな視線で注目してもらう事です。例えば、既存では製造業などが入居していた物件に対して、ITや医療研究施設を新規テナントとして迎え入れる事です。改築的にそれを実証したのが、704 Alexander Streetプロジェクトです。当初は防具製造・販売企業が入居しており、一階部分で製造が施され、上階は製品の保管と搬出のために使われていました。

その様な物件に今までにも他のブログでご説明してきた様な改築を施し、異業種であるITとラジオ局を迎え入れました。これにより、建物への訪問客数は大幅に増え、物件としても明るく地域のアイコンに生まれ変わりました。

新たな利用方法を提案するだけであれば、誰でも出来そうな事で、特別なスキルも必要なくなります。よって、本来であれば弊社の競争相手ももっといるはずです。しかし、実際は空室率がゼロである現市場状況や何をやっても成功する状況以外では、改築手法を用いるデベロッパーは多くありません。

ではなんで参加者が少ないのでしょうか?一番大きな理由はリスクです。この様な改築作業は時間がかかり、費用もかかります。よって、プラニング時点の現市場と改築が終了し物件が竣工した時では市場状況が変化しており、現在予測する市場トレンドや需要が存在しない可能性があります。そうなると、「じゃあこの物件誰に入って貰うの?」、「新ターゲットは誰にするの?」という事になりかねません。

どの様なビジネスでもそうだと思いますが、自分の物件(提供商品)の弱さを認め、下手に回り、購入をお願いする立場に転換してしまうと、その商品の提供価値は激減してしまいます。不動産においても同じで、当初の価値を維持する事、または更に新たな価値を提供できる柔軟性は必須です。

しかしながら、不動産は製造ラインを変更すれば翌日から新作が提供可能になる(製造業もこんなに簡単ではないと思いますが)業界ではない為、戦略の読みミスはプロジェクト自体の失敗になりかねません。

では「我々はどの様にこのリスクを回避しているのか?」 答えは対象物件の位置付けにあります。竣工時の市場内の位置付けとして、当初のValue Proposition(提供価値)を維持出来るのであれば、プロジェクトとしてもベストです。しかし、これが不可能かもしれない時の為に、危機回避策を準備しておく必要があり、弊社では物件価値の継続(品質、使い方の柔軟性)が一番のリスク対応策だと考えています。実際に建築基準に於いても今後の変化を見据えた工事を行なったり、建造レベルにおいても長期建物の魅力を維持できる様に施すこと、複数の業界に取り入れやすい物件にする事などは、貴重なポイントです。

購入・改築クライテリア

この手のプロジェクトでは、ドライ倉庫(物資貯蔵施設)や軽製造施設をメインのターゲットとして購入してきました。更に、老朽化し元の用途では運営継続不可能な物件をターゲットにする事で、購入価格も市場価格より低下して購入できる事が多く、価格面からも魅力的になります。しかし、すでにご説明したように、現在のようなインダストリアル物件の過剰的な需要状況では、物件のマイナス点は抹消され、地価が取引のメインポイントになっています。

更に改築の程度によってもリスクや利益は大きく変わります。例えば、修繕範囲で終了するものであれば、建築申請は必要ありませんし、期間も一年以内に終了するものが殆どです。しかし、窓の拡張や外観変更は建築申請が通常必要になって来ますので、一年以上の工期を予定しておく必要があります。これらに加え、現状の物流ボトルネックや資材の高騰などは工期の延長や予算の増額になり、リポジショニング戦略を更に専門分野に押し上げ、経験者とリスク管理が可能な投資家のみが扱える投資手法になっています。

弊社についてお話しすれば、カナダの建築資材の多くはアメリカからの輸入に頼っており、価格の上昇から逃れられません。また、バンクーバー市場は今までにもお伝えしてきた様に、物件の価値より地価が売買の基本になってしまっています。よって、異常なほどの価格の高騰が効率良い物件の購入を不可能にしてしまい、本来の不動産投資業を困難なものにしています。結果、弊社は米市場への拡張を判断しました。

よって、リポジショニングとは、改築を通して従来の物件の価値を再開拓し、表面化させ、新たな利用方法を提案させる事で物件価値を最大限活かす投資戦略のことを言います。

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