今回は実践的な観点から不動産投資というものを見てみたいと思います。現在も複数のマクロ的状況から経済は不安定な状況であると共に、将来の予測が不透明な状況です。そのような中でも時間は止まりませんし、投資家からの要望は継続します。このような状況の中、
・当初の目論見で立てた投資戦略およびファンドの出口は経済などの状況により変化するのか?
・変化する場合には「なに」が要因なのか?
・そして、変化(変更)する場合には、「いつ」(もし可能であれば)がそのポイントなのか?
について、我々の考え方をお話ししたいと思います。
1)当初の目論見で立てた投資戦略およびファンドの出口は経済などの状況により変化するのか?
まずは、「当初の目論見で立てた投資戦略およびファンドの出口は経済などの状況により変化するのか?」ですが、簡単に申し上げれば「YES」です。投資とは常に変化する生き物です。そして不動産はミクロのみならず、マイクロ状況からの影響を大きく被ります。よって、当初建てた仮定と状況が変化すれば、出口は自ずと変更される必要が出てきます。
一番いい例が弊社で取り掛かった、1270 Frances Streetです。何度も既に取り上げていますが、これは50,000平方フィート(5,000平米)の再開発プロジェクトでした。バンクーバーのメディアは、この様な再開発が市場初めての試みであった事から、大きく取り上げてくれました。しかし、コロナ禍の到来と将来の測定不可能な状況からプロジェクト自体を中止しました。弊社としても費用は計上していましたが、既存物件をそのままに売却する事で、当初の予定通りには行きませんでしたが、利益を確保することにしました。
2)変化する場合には「何」が要因なのか?
では、出口が「変化する場合には「何」が要因なのか?」になりますが、様々な要因が含まれています。上記の様なマクロ的異変や経済的不況や大幅な金利変動が代表的な例として挙げられます。ただ、これらもある程度はプロジェクト開始前に想定するべき項目ですので、プロジェクト開始後に戦略を変更する場合には、想定不可能な状況が起こる必要があります。でなければ、それはファンド事業者の想定不足にしかならず、事業者としての運営ミスになります。
また、予算の急激な高騰も要因の一つになると思います。現在のロシア-ウクライナ戦争やコロナ禍の延長により、想定影響期間の長続きからくる経済困難が発生しています。これにより、人材確保難や供給物資コストの著しい高騰はほとんどの人が想定出来ていなかったと思います。
3)変化(変更)する場合には、「いつ」が判断ポイントなのか?
ではこの様な「変化(変更)する場合には、「いつ」が判断ポイントなのか?」という問題ですが、これは一番難しい判断だと思います。想定外である訳ですから、その様な準備は全くされていません。しかし、運営責任者としては常に「非常事態宣言をどの時点で出すか」、そして「その判断を出す為にはどの様な状況である事が必要か?」という事を頭の中に入れています。
例えば1270 Frances Street再開発プロジェクトに戻りますが、カナダやバンクーバーでは2019年12月ごろから新型ウィルスとして巷で上がってきていました。また、翌2020年2月末ごろには明らかな社会現象としてバンクーバーでも現れ始めていました。弊社としては年末から状況を追っていましたが、2月になっても将来的想定や見通しは不可能でした。よって、弊社では1)なにが最優先事項なのかを考えました。そして2)それを実行する為に必要な事を考え、3)段取りを考えました。また4)として、その判断後の状況はどの様になるのか、会社としてどの様に対応する必要があるのかが課題でした。弊社では最優先事項を投資家の資産の安全と考えている為、資産の返金を判断し、全ての出資契約を無効にする手続きを取りました。
3月上旬には物件売却を判断し、市場に出し、その4日後には売却契約書を交わしていました。そしてその後の4月にはバンクーバー市全体のロックダウンが発表されました。
4)まとめ
今考えればFrances Streetプロジェクトは続行の余地はありました。でも2020年の時点で2022年の状況を見るのは不可能です。ですから、「いつ」と言う判断をする為には常に状況を観察し判断をしていなければいけません。そして運営者が事前に決めているThreshold Point(要決断地点)を超えると同時に、その非常時宣言を行い優先順位通りに執行する事が必要になります。その場合、躊躇する事が命取りになり、運営者の将来的評判を左右させる事になります。
もちろん、この様な前代未聞の非常状況に対しては事前に詳細まで考えることは不可能です。ですから、尚更の敏速な行動と、要決断地点の設置が重要になります。
弊社としても共同投資運営者として今回の教訓は良い物となり、「非常訓練」の実地が出来ました。きっと弊社ではこの先にも類似事件が起きた場合には、敏速な運営判断を行い、本当の意味での投資家保護を優先した戦略をとっていくと思います。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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